
ハンドメイド作家が知っておきたい「販売のメリット・デメリット」と「安全管理」の話
趣味の延長で始めたハンドメイド作品づくり。minneやCreema、フリマアプリなどを通じて、今や誰でも手軽に「自分の作品を売る」ことができる時代になりました。
ちなみに、かくいう私も2019年から一ハンドメイド作家(つまみ細工士)として、ネットで作品を販売してきました。
私事ですが、BASEにて、「つまみ細工の紗織屋」をOPENいたしました!
syaoya08.handcrafted.jp
さて。記事にもどります。
一方で、対価を得て継続的に販売する以上、そこには「趣味」では済まされない法的な責任が発生します。この記事では、個人のハンドメイド作家がネット・フリマ販売をするメリットとデメリット、そして見落とされがちな「安全管理」と「価格設定」の関係について考えていこうと思います。
ハンドメイド販売のメリット
1. 少ない元手で始められる
店舗を構える必要がなく、材料費とプラットフォームの手数料程度で始められます。在庫を抱えるリスクも、受注生産にすれば最小限に抑えられます。
また、アクセサリーなどの小物であれば、保管に対して場所もとりません。
2. 自分のペースで続けられる
本業や家事育児の合間に、好きな時間に制作・出品できる自由度の高さは、他の副業にはない魅力です。
3. 「好き」を収入に変えられる
趣味として続けてきた技術や感性が、そのまま商品価値になります。お客様からの反応が直接届くのも、モチベーションになる要素です。
4. 一点物・小ロットならではの付加価値
量産品にはない個性や物語性が、価格競争とは違う軸での評価につながります。
ハンドメイド販売のデメリット・注意点
1. 「趣味」から「事業者」への意識の切り替えが必要
ここが最も見落とされがちなポイントです。対価を得て継続的に販売する行為は、法律上「業として」の販売とみなされます。 これは規模の大小や、本業か副業かを問いません。つまり、フリマアプリで週末だけ売っている場合でも、法的には立派な「製造業者」としての責任を負う立場になるのです。
具体的には、製造物責任法(PL法)の適用対象となり、万が一自分の作った製品が原因で購入者に怪我などの損害が生じた場合、過失の有無にかかわらず賠償責任を負う可能性があります。
2. 利益が出にくい構造
プラットフォームの手数料(10〜22%程度)、材料費、梱包・配送費を差し引くと、想像以上に手元に残る金額は少なくなりがちです。
3. クレーム・トラブル対応を一人で抱える
製品への不満、破損、体質に合わなかった場合の対応など、すべて自分で窓口となって対応する必要があります。
4. 安全管理のノウハウが不足しやすい
メーカーであれば当然行っている品質管理や安全設計の知識を、個人で一から身につける必要があります。ここを軽視すると、後述するようなリスクに直結します。
「安全性」は見た目や独自性より優先されるべき理由
ハンドメイド作品は、デザイン性や世界観が評価の中心になりがちです。しかし、法律上の建前は明確です。製品には「通常有すべき安全性」が備わっていなければならず、これは有用性やデザイン性より優先される価値として位置づけられています。
これは決して精神論ではなく、PL法における「欠陥」の定義そのものです。欠陥には主に3つの種類があります。
-
製造上の欠陥:作業ミスや接着不良など、想定通りに作られなかったことによるもの
-
設計上の欠陥:構造自体に安全上の問題があるもの(小さな部品が外れやすい、鋭利な部分が残っているなど)
-
指示・警告上の欠陥:注意事項や成分表示が不十分であること
「かわいいから」「売れているから」という理由だけで安全確認を後回しにすると、いずれかの欠陥に該当するリスクが高まります。
※ヘアアクセサリーを例にしたリスクの具体例※
私がつまみ細工作品を扱っておりますので、それを例としてあげてみます。
布・金属クリップ・接着剤(ボンド)を使うヘアアクセサリーを例にすると、以下のようなリスクが想定されます。
素材 主なリスク 布生地 染料の色移り・かぶれ、化学繊維によるアレルギー、可燃性 金属パーツ 金属アレルギー、経年劣化によるバネの破断、鋭利なエッジによる負傷 接着剤(ボンド) 皮膚刺激、経年劣化による部品脱落・誤飲、熱による軟化・剥離
特に金属アレルギーは日本人の10人に1人が発症していると言われるほど身近な皮膚疾患であり、金属パーツを扱う作家は無視できないリスクです。また、接着剤の劣化によるパーツの脱落は、時間差で発生する「経年劣化型の欠陥」であり、販売時点では問題がなくても後から事故につながりやすい点に注意が必要です。
安全管理のためにできること
法的な義務というよりも、リスクを未然に防ぐ実務上の工夫として、以下が有効です。
-
素材・構造上のリスクを洗い出す:金具の強度、染料や接着剤の安全性、小部品の誤飲リスクなどを制作前にチェックする
-
警告表示・注意書きを添える:アレルギー成分、対象年齢、使用上の注意を商品説明や同梱物に明記する
-
使用素材や製造工程を記録しておく:仕入先や使用した接着剤・金具の情報を残しておくと、万が一のトラブル時に「欠陥がなかったこと」を説明する材料になる
-
PL保険への加入を検討する:個人でも加入できる生産物賠償責任保険がある。
価格に「安全性」を反映させるべきか
「安さ」が魅力で、フリマなどでかわいいアクセサリーを購入する方は確かに多いでしょう。自分で作るより、お手軽に誰かが作ってくれたものだから、似たようなブランド物より安いからネットで買った、という場合もあるでしょう。考え方は人それぞれですが、私個人としては、そうは考えておりません。
結論から言うと、反映させるべきです。
安全性の確保には、コストがかかります。それは、「見えない付加価値」でもあります。
安全管理にかけたコストを正当に価格へ反映させることは、作家自身を守ることにも、業界全体の質を保つことにもつながります。
まとめ
ハンドメイド販売は、少ない元手で「好き」を仕事にできる魅力的な選択肢です。しかし、対価を得て継続的に販売する以上、趣味の延長ではなく「製造業者」としての責任が伴うことを忘れてはいけません。
見た目や独自性にこだわる前に、まず「安全に使ってもらえるかどうか」を確認する。そして、その安全性を確保するためにかけたコストは、堂々と価格に反映させる。この姿勢こそが、長く安心して作家活動を続けるための土台になるのではないでしょうか。
以上、一ハンドメイド作家として(一行政書士として)の考えとなります。
※個別の法的判断については、弁護士など専門家にご相談ください。